新約聖書を開いて、先ず一ページの始めから読む・・・そして長々と聞き慣れない名前の羅列。ついに飛ばしてしまうのが常である。田舎の或る人は言った・・<アブラ虫がイナゴを生み>なら分るが、ことばが馴染めない!と。
そこで大方の読者は閉じてしまう。又本棚で再びページが開かれにくいのが常であった。
ところが・・・この系図の中に途轍(とてつ)もない深い意味が潜んでいるのを見出す。
それは、その先祖に娼婦であったラハブの名と、近親相姦の娘・ルツの名が列ねている故です。
◆神の選民と異邦人(外国人)
イスラエルの民(ユダヤ人)、悲惨な暗くて腐敗した歴史。その途次、嵐の後の静けさが漂う二つの麗しい女性の物語。
この系図には何故か?五人の女性の名が記されているのを見る。この五人の内一人だけが清純な処女マリヤ。キリストはこのマリヤから生まれました。
残りの四人は、タマル、ラハブ、ルツ、バテシバで何れも異邦人と再婚の女性でした。王制の国で外国人や、ましてや再婚の女性を王室に入れることは、更に、娼婦が入ることなど考えられないこと。
これが暗示していることは、キリストがユダヤ人に限らないで異邦人にも、しかも罪深い人々にも関わっている”神秘”がある。(詳細はルツ記及びマタイ福音書。回復訳注解に見る)
◆ルツ記から(旧約聖書)
聖書を読んだことが無い人も、ミレーの”落ち穂拾い”や”晩鐘”、”種まく人”の画を見ない人は少ないくらい有名な絵。それは茨の中から生長する白百合のような香りを漂わせている。この画の原点は旧約聖書のルツ記にあり、その歴史の背後には、死海に没した町、火による消滅したソドムから逃れて住んだロト(父)。との近親相姦の間に生まれた一人の女ルツ。(創世記24章30~38節に詳細)彼女は成長して飢きんの為、ユダの地ベツレヘムからモアブの地へ移住して来たナオミ(ユダヤ人)。その後、夫と死別し二人の息子はモアブの女性をめとった。しかしながら息子たち二人とも死んだ。その嫁であったモアブの女がルツ。
ルツ記一章の始めからその災難と不幸の連鎖がある。六節は、母、ナオミは二人の嫁を連れて帰ろうとした時。8節~18節にその嫁と姑のやりとりに涙する。22節にこうして、ナオミとモアブの亡き息子の嫁ルツと一緒に帰って来た。彼女たちは大麦の刈り入れの頃郷里のベツレヘムに着いた。
◆王の系図から(マタイ一章5~6節)
サルモンは”ラハブ”から「ボアズ」を生み、ボアズは”ルツ”からオベデを生み、オベデはエッサイを生み、エッサイは”ダビデ王”を生んだ。
さらに旧約聖書をたぐって、ルツ記四章20~22節を見ると、ナションはサルモンを生み、サルモンは「ボアズ」を生み。ボアズ~オベデ~エッサイ、エッサイは「ダビデ」を生んだ。
かくして・・・ルツの夫となったボアズの血統は娼婦であったエリコの住んでいた窓に。赤い紐のしるしを吊るした女性であり。それから三代目に最も偉大なるダビデ王が生まれた。
◆選びのみ手
多くの人々の中から一人の人。アブラハムが選ばれ、多くの人々の父祖となった。創世記十二章1~3節にそれを見る。
アブラハムから42世代目にキリストがお生まれになった。神が選ばれた民イスラエルは、この様に異邦人を血統の中にもち、奇しき人種配剤によって、選民に限らず。すべての民の救い主として誕生された。国や人種の差別が無く、全人類の救い主として、神は、み子イエスをこの世(サタンの支配するアーカイブ2021.4月暗闇の王国参照)に遣わされた。
これらのの系図に秘められた数々の出来事。エリコのロックダウン~ナオミの郷里ベツレヘムの飢饉。隣国モアブ移住等々。イエスの誕生1100年も前の出来事の意味を深く考察しなければならない。